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小説 「悪意」 [小説]

悪意 (講談社文庫)

悪意 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2001/01/17
  • メディア: 文庫

小説 「あくい」
東野圭吾 講談社文庫(¥660 税込)
オススメ度 ★★★☆☆

加賀恭一郎シリーズ、第4弾。
↓ネタバレです。未読の方はヒキカエセ。


「叙述トリック」の最たる作品。

ある小説家が殺される。
その前後のことを、知人の児童文学者が記録していたので、読者はその記録を読む形になる。
警察も、その記録を参考に、捜査を進めることになるのだ。

これが曲者。
読者も警察も、「事実」を知るのではなく、児童文学者のフィルターを通した文章を読むことになるわけだから、知ることができるのは「彼が書いた事」だ。
当然のことながら、「彼が書いていない事」を、読者も警察も認識できない。
つまり、途中までは、「彼が書いた事」だけが事実であるかのように思わされてしまう。

これを壊すのが加賀恭一郎だ。
加賀は、周りの人の証言とその手記を比べて、ちょっとした違いに気づき、そこから少しずつ、「違いの原因」を調べ、真相の糸口をつかむ。

読者は、途中に出てくる「犯人についてのどんでん返し」については、たやすく気づくことができる。
でもそれだけじゃあない。
カンジンなのは、動機の方なのだ。(それがタイトルの「悪意」につながる。)
まあこっちも、うすうすはわかるんだけどね、最後に、動機についてのどんでん返しが待っている。

私は、「ああ、やっぱり…。」と悲しい気持ちになった。
自分を正当化したり、誇示するために、こんなにも卑怯なことを考えちゃうワケなのね。と。

ちょっと「20世紀少年」を連想した。
「オレはこんなにすごいのに、どうして誰も気づいてくれないんだ!」と切れちゃう、みたいな。
(昔、知人から、「自分はとても愉快で面白い人間なのに、みんなそれに気づいてくれない。」と聞かされて、たまげた事があった。私も、彼をいわゆる「ネクラ」としか見ていなかったからだ。たまげてあきれて、何も言えなかった。)

本当にすごかったら、気づいてもらえると思う。
すごくないから気づいてもらえない、実はそれだけなんだよね。でもそれを自分で認めてしまったら、やっていけないじゃない?自分の存在そのものが、ガラガラと崩れてしまうじゃない?

自分が、普通の地味な人生のままで生涯を終えることについて、多かれ少なかれ、誰もが焦燥感を持っていると思う。
「自分の人生は、なかなか大したものだった。」と思えるかどうかは自分次第だろう。
他人からそう言ってもらいたい、と思うのは大それた望みだと思うし、ましてや、人をおとしいれてまで、自分を認めさせようなんて、とんでもない思いあがりだと思う。

それを一言で表現したのが、「悪意」という言葉なのかな。と思った。
フィクションで良かったね。

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