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小説 「赤い指」 [小説]

赤い指 (講談社文庫)

赤い指 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/12
  • メディア: 文庫

小説 「あかい ゆび」
東野圭吾 講談社文庫(¥580 税込)
オススメ度 ★★★☆☆

加賀恭一郎シリーズ、第七作。
↓ネタバレあり。

加賀恭一郎シリーズで2010年9月現在、文庫になっているのはここまで。
八作目の「新参者」は、まだ単行本。

ある日、サラリーマンの中年男性に、妻から「早く帰ってきて」と電話が入る。
不審に思いつつ帰宅すると、なんと、庭に子供の死体が転がっていた。
妻の話によると、どうやら中学生の息子が殺人を犯したらしい。
詳しい話を聞こうとしても、息子はキレるばかり。
警察に電話をしようとすると、妻は半狂乱で止める。そんな事をしたら、あの子がどうなると思うのか?自分達はどうなるのか?

男は、家庭を守るための選択をする。
この死体さえ家から無くなれば良い、と考える。
女の子は彼らにとって邪魔な物体でしかないのだ。

ひどい。
ムカムカしながら読んだ。

彼が守ろうと考える家庭は、既に壊れているのではないか。
妻は痴呆症の母親(男の実母)の世話をしないから、毎日、男の妹が面倒をみるために通ってくる。
そんな妻に、男は既に愛情を感じていないし、妻が溺愛している一人息子は、男からは遠く離れている。
男は息子に直接ぶつかろうとせず、妻を通して伝言ゲームをするだけだ。

彼は一体何を守ろうというのか?自分か?

男が捨てた少女の死体が発見され、どうやら別の場所で殺されたらしいとわかり、付近の聞き込み捜査が開始される。
待ってました、加賀恭一郎登場。

今回、加賀のパートナーになるのは、なんと、加賀の従兄弟だ。
父親のいない彼は、加賀の父親(元警察官)を、自分の父のように慕っている。
父親は現在入院中で、病状は悪い。
看護師との1日一手の将棋を楽しみにしていると知り、相手をしたさに、将棋を習おうとまで思う。(父親にやんわり断られるのだが)

そんな彼だから、父親の見舞いに行こうとしない加賀に対して、怒りにも似た不満を持っている。
加賀は優秀な刑事だと聞かされているが、それとこれとは別だ。

しかし、やがて彼も、加賀の優秀さを認めずにはいられなくなる。
そして加賀の考え深さを知ることになる…。

この作品では、親子5組の話が丁寧に描かれる。いくつかは深い絆で結ばれているが、いくつかは破綻している。
サラリーマン夫婦と、その息子。
サラリーマンと、その母親。(父親は既に死亡)
被害者の小学生女子と、その両親。
加賀の従兄弟と、その母親。
そして、加賀恭一郎と、その父親。
あ、従兄弟と加賀の父親の「擬似親子関係」を入れたら6組だな。

んー、私はね、加賀は本当の意味で父親を「許して」はいなかったんじゃないか、と思うんだ。
子供の頃から、母親の失踪の原因は父にある、と思っていたんでしょ。
そのことを悔やむ父親の心情を、理解はしたんだろう、理解したからこそ父の言いつけを守ったのだろうけど、それは「男と男の約束」であって、子が親を思うものではないような気がするんだ。
なんつーか、暖かさを感じないんだ…。

これは、死に行く者を尊いものとして描くことに、私が元々反感を持っているからかも知れない。
和解した、と見るのがまっとうなのでしょう。
ひねくれててすみません。

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