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テレビドラマ 「眠りの森」 [テレビ]

加賀恭一郎シリーズは、テレビでは「新参者シリーズ」と言われているようです。
新作として、お正月の特番(2時間ドラマ)になりました。
原作についての感想はこちら。オススメ度は★★★でした。

原作とドラマの大きな違いは、ドラマでは、事件は「撲殺」と「毒殺」の2回だけで、「毒殺未遂」は起こらなかった、という点です。
事件が3回起こるので読者は混乱するわけですが、このミスリードは、ドラマでは省かれました。
時間的制約から、カットされたのでしょう。

ドラマのキャスト
 加賀恭一郎=阿部寛
 加賀の父親=山﨑努
 太田(定年間近の刑事)=柄本明
 浅岡未緒(バレリーナ)=石原さとみ
 高柳亜希子(プリマ)=音月桂
 斎藤葉瑠子(バレリーナ、未緒のルームメイト)=木南晴夏

ドラマのオススメ度は原作と同じく ★★★☆☆ かな。
いや…実写の短所に気づいちゃった点もあるし… ★★☆☆☆かな。

(当然ながらまだDVDは出ていないです)
原作本は↓
眠りの森 (講談社文庫)

眠りの森 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1992/04/03
  • メディア: 文庫

以下、超ネタバレ有り↓


「新参者」は、加賀シリーズの第8作目。
この「眠りの森」は2作目ですから、かなりさかのぼります。
加賀が使っていた携帯電話が2007年発売のN703iDだった?
 (この機種は当時オシャレ系だったと思うので、加賀が持つには違和感があるんだけど、
  観ている人に「昔だ」と気づかせるために分かりやすい機種にしたのかも知れません。)
私の眼力が正しければ、今回の「眠りの森」は、2010年の「新参者」の2、3年前でしょう。

テレビ版しか知らない視聴者は、「アレッ、お父さん生きてる!」とビックリしたかも。
・携帯電話が古いし、スマホ使ってる人がいない
・加賀が警視庁にいる
・加賀の捜査がまだ未熟
というのも、古い話だという証拠だと思いますが、もっと分かりやすくすれば良かったのに。

物語は、加賀と女性(仲間由紀恵)がバレエ「白鳥の湖」の客席にいるシーンから始まります。
バレエに興味のない加賀は居眠りしてしまい、あきれた女性から「お見合いは私から断っておきますから!」と宣言されます。
怒りながら立ち去る女性の背中に、加賀が「山田さん…!」と呼びかけます。
(はいここ大事ー。実はこのシーンは映画『トリック 劇場版 ラストステージ』の宣伝でした!)

しかし加賀はバレエを全く観ていなかったわけではありません。
ふと目覚めたとき、黒鳥「オディール」を踊る女性(浅岡未緒)に釘付けになり、強く心ひかれるのです。

これがねえ…。
未緒役の石原さとみさんは、実に良かったです!
表情も良かったし、本当に踊っていたし。
でも、加賀がホレるには幼いカンジでした。
実年齢も20歳以上違うせいか、二人のやりとりは、ほほえましいばかり。
このへんが、実写の短所と私が感じた所以。

ここから「あらすじ」。

バレエ団の事務室で、団員(葉瑠子)が侵入者(風間)を殴り殺す、という事件が起こります。
正当防衛と思われますが、侵入者(風間)は、何を目的にバレエ団の事務室に入ってきたのか?
「自分がやった」と言っている葉瑠子の供述も、どこかおかしい。
捜査は難航し、葉瑠子のルームメイトの未緒は、拘留期間が長引いてレッスンできない事がバレリーナにとって致命的である事を加賀に訴えますが、どうにもなりません。

なおも警察が捜査を続けている中、バレエの演出家(梶田康成)が毒殺され、恐らくその犯人であろうバレリーナ(森井靖子)が自殺します。
しかも、撲殺された風間が、バレエ団への侵入前日に、靖子の部屋を訪れていた事がわかります。
靖子は、バレエ団のプリマ(高柳亜希子)と共にバレエ留学していた事があり、風間の渡米期間とは2年のズレがありますが、何か関係がありそうです。
という事で、加賀はニューヨークに飛び、真相に近づきます。(真相ではない)

…とまあ、普通のブログならここで書くのをやめるんでしょうけど、
真相を書いちゃおう。

**ここから超ネタバレ**

今から4年前、バレエ団のプリマ(高柳亜希子)はアメリカ留学中、別れ話のもつれから、日本人画家に怪我をさせてしまう。
表ざたになる事を恐れた演出家は、亜希子と画家男性に「恋愛関係にあったのは靖子だった事にしよう」と提案して、事をもみ消そうとする。(靖子には無断)
しかし、実際には画家は警察に「アジア系の娼婦に刺された」と言い、捜査の手はバレエ団までは伸びなかった。

今から2年前、その後もアメリカに留まっていた画家男性は、後輩(これが風間)に
過去の恋人への思いを語るが、恋人の名前を「亜希子」ではなく「靖子」と告げる。

今から数ヶ月前、免許取りたての葉瑠子は、助手席に未緒を乗せてドライブ中に事故を起こし、
自分は足を怪我して、未緒には「頭部強打による進行性の難聴」を負わせてしまう。

撲殺事件前日、風間は「靖子」の部屋を訪れ、画家男性が余命いくばくも無いので最後に会ってやってほしいと懇願するが、靖子は「それは亜希子の間違いだ」と言う。
と同時に、靖子は、演出家がスキャンダルを自分にかぶせようとした事を知り、彼をあがめていた自分が裏切られていた事に、強い絶望感と憎悪を抱く。

撲殺事件当日、風間はプリマ(亜希子)に↑と同じ事を懇願するが、「無かった事にしたい」亜希子が応じるはずも無い。
無理強いする風間と、嫌がる亜希子がもみ合う現場に駆けつけた未緒は、後ろから男を殴り倒す。
そして、「耳が聴こえなくなる前に舞台を全うしたい」「恐らく次の舞台が最後」「亜希子が怪我をしたら、舞台が中止になってしまう」「だから殴った」と語る。
これを聞いて、未緒の難聴に責任を感じていた葉瑠子は、「自分が殴った事にする」と提案。

数日後、靖子は演出家のジャンパーに毒を仕込み、自らも死を選ぶ。
(原作ではボールの空気入れの針が使われるが、ドラマでは砂絵に使う注射器の針が使われる)

更に数日後、加賀は、亜希子と未緒に全ての理由が分かったことを告げる。
しかし二人は「眠りの森の美女」の舞台が終わるまで待ってほしいと頼む。
亜希子は主役のオーロラ姫を、未緒はオーロラ姫復活のお祝いに訪れたフロリナ王女を踊りきる…。

**ここまで超ネタバレ**

私はバレエ界のことがわからないので、大きな疑問が二つ。
・画家の男に怪我をさせたのは、ただの事故として普通に示談に出来なかったの?
・バレエに人生を賭けているからといって、自分を認めてくれない演出家を、問答無用で殺してしまえるものなの?(あまりにも純粋すぎない?むしろ男女関係があった、っていう方がリアル)

しかしそれにしても、毒殺された演出家の描写が少なかった。
彼の釈明・言い訳シーンが一切無い。
毒殺事件は、小説の構成として、最初の撲殺事件のかく乱の為に配置されたのでしょうが、扱いが雑じゃないでしょうか?
通常、本人に話を聞いて「何この男!どうにもならん!」つって殺さないかなー?

それともう一つ、実写だから感じたこと。
今回は本当にバレエを踊れる人を使ったようですが、「プリマ」の大きさをどうにかごまかせなかったものでしょうか?
プリマの亜希子を演じたのは、宝塚の男役だった方のようです。
やせているといってもバレリーナのやせ方とは違うので、でっかくたくましく見えちゃいました。
とても美しいんですけども…。

それに比べて未緒の可愛らしいこと。
そうなのよー上にも書いたケド、加賀が未緒にプレゼントを贈ったり、入れ込んだりしてるシーンを見ても、リアルにホレてるカンジがあんまり伝わってこなかったんですよねー。
むしろ加賀がホレるなら亜希子みたいなタイプじゃないかと。
この後、未緒への入れ込みが原因で加賀は「飛ばされる」ハズなので、ちょっと残念です。

原作本のレビュー時にも書いたのですが、「眠りの森」というタイトルにも違和感があります。
確かに、最後に未緒が踊るのは「眠りの森の美女」の舞台ではあるのですが、彼女は主役ではない。
その演目の中の、いちバリエーションを踊るだけなのです。
加賀と微妙な関係を築くのは、主役の美女であって欲しかった。

不満な点ばかり書きましたが、
加賀と一緒に行動する老刑事(柄本明)とのやり取りは、とても良かったです。
ドラマの中の加賀は、明らかに「新参者」の時の加賀ではなく、まだまだ未熟でした。
老刑事から学んだ事があっての、人情派の加賀の形成、って事なんだろうな。
そう思わせる良い雰囲気でした。


参考:加賀恭一郎シリーズ
(1)卒業 … 加賀は大学4年生。教師を目指している。私の感想はこちら。★★★
(2)眠りの森 … 本作。なぜか加賀は警視庁捜査一課の刑事。★★★
(3)どちらかが彼女を殺した … 練馬署の刑事。私の感想はこちら。★
(4)悪意 … なぜか警視庁捜査一課。時系列が変なのかな?私の感想はこちら。★★★
(6)私が彼を殺した … また練馬署。私の感想はこちら。★
(5)嘘をもうひとつだけ(短編集) … 練馬署。私の感想はこちら。★★★
(7)赤い指 … 練馬署。父親死亡。私の感想はこちら。★★★
(8)新参者 … 日本橋署。私の感想はこちら。★★★★
(9)麒麟の翼 … 日本橋署。未読。
(10)祈りの幕が下りる時 … 多分、日本橋署。未読。

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