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映画 「真夏の方程式」 [映画]

テレビにて鑑賞。
ほぼ1年くらい前に原作について書きました。(←リンク先ネタバレあり)
映画は初見です。

真夏の方程式 DVDスペシャル・エディション

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真夏の方程式 Blu-rayスタンダード・エディション

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  • メディア: Blu-ray

映画 「まなつの ほうていしき」
原作:東野圭吾 監督:西谷弘 出演:福山雅治、吉高由里子、杏ほか
(DVDスペシャル版は¥4500くらい、ブルーレイスタンダード版は¥3800くらい)
オススメ度 ★★★☆☆

↓以下超ネタバレあります。

冒頭、何者かが荒い息で女性(西田尚美)を追いかけた末に刺殺する。
(ここは小説で言うところの「叙述トリック」が使われている。)
(このシーンが本編とどう関わるのか、映画の後半で明らかになる。)

湯川学(福山雅治)は、海底資源開発をしようとしている会社からの依頼で、玻璃ヶ浦に行く。
柄崎恭平少年(山﨑光)は、親戚の家に泊まるため(預けられる)、玻璃ヶ浦に行く。
恭平少年のいとこ川畑成実(杏)は、玻璃ヶ浦の海底資源開発に反対している。
元刑事の塚原正次(塩見三省)は、何らかの目的をもって玻璃ヶ浦に行く。
川畑重治(恭平少年の叔父、成実の父)(前田吟)と、その妻節子(風吹ジュン)は、玻璃ヶ浦で旅館を経営している。
この旅館に、上記のすべての人物が集まることになる。

ストーリーは原作と同じなので、知りたい方は
以前書いた「原作についてのレビュー」をご覧ください。

原作で腑に落ちず、映像で見て何となく納得したのは、「湯川の、少年への肩入れ」の件です。

今回、湯川はこの事件についてあまり興味がなく、ましてや、海底資源会社のオブザーバーという仕事にすら興味がないようです。
それよりも、恭平少年の「海中を見てみたいが、自分は泳げないから見るのは無理だ」という事への対応に懸命になり、ペットボトルロケットを利用して、彼の望みをかなえようと奮闘します。
今回の映画の一番良いシーンはここだと思います。

とても、とても美しいのです。
だから少年のために一生懸命になったのだろう、と思えます。

後から湯川は「あの子と話してもじんましんが出ない」と言いますが、その理由は言葉にされません。
でもこのシーンを見て、恐らく、少年を好きになっちゃったからだよね、って思いました。

それでも、湯川が元刑事の死について無関係でいられるわけがなく。
(だって彼が主人公のミステリですからね!)
警視庁の草薙(北村一輝)と岸谷(吉高由里子)の要請もあって状況確認を始め、どうやら色々な事がわかってしまったらしいのですが、このあたり、彼は無言です。

無言だから、逆に犯人を追いつめることになります。
この点も、原作ではあまり感じず、映画で感じた点でした。

犯人は警察に(一部は嘘の)告白をしますが、湯川は嘘を糾弾しません。
それはひとえに、知らなかったとはいえ結果的に殺人に手を貸してしまった者の、今後の人生を思いやってのことからです。

*****

この「真夏の方程式」は、犯人についての取り扱いが「麒麟の翼」と全く逆のベクトルだと思います。
同じころに執筆された作品なので、作者はわざと真逆にしたのかもしれません。
(まだ「麒麟の翼」について書いていませんが、いずれ書きます。)

「麒麟の翼」では、「かばう者」に対して主人公の加賀は憤り、真犯人を明らかにします。
かばってしまえば、「かばわれた者」の罪悪感は行き場所を失うからです。
たとえその罪が故意でなかったとしても、罪は罪であり、罰を受けるべき、という事なのでしょう。

しかしこちらの作品では、湯川は「かばう者」の気持ちをくみます。
真相は警察に告げられないままで映画は終わります。
「かばわれた者」は、罪悪感を抱いたまま、生きていくことになるわけです。
一緒に苦しんでやる、と彼は言います。

恐らく、加賀は刑事で、湯川は法の執行人ではないから…でしょうか。
また、湯川は前作(容疑者Xの献身)にて、「かばう者」に対して愛惜を抱くようになったのかもしれません。

私としては、現時点では加賀に共感します。
現時点では、罪をさばくのは心ではなく法だからです。
さらに、「やむにやまれぬ事情」とか、「不注意」とか、「無知」による罪であれば、
恐らく非情に罰せられる事はないだろう、という、法に対するロマンを持っているからです。

○○が自分の罪を悔いた時、湯川はたまたまそばにいられました。
しかし××が自分のやった事の意味に気付いた時、フォローしてあげられるでしょうか?
このままそっとしておいてやる事は、少しも××のためにならない可能性があります。
後でもっとひどい事になってしまわないでしょうか?

ところで、海底の開発について、全く結論は明らかにされずに映画は終わります。
ちょっと気になりますが、その点については、この話の本筋と直接関係が無いという事なのでしょう。
湯川は「海底の資源を得ようとすれば、代わりに何かを失っても仕方がない」という意味の事を言うので、恐らく開発計画は進むのだろう…と予感させられますが。

_____

以下おまけ。
めっちゃネタバレなメモ。(↑に書いた○○も××も、↓を読めばわかる。)

<30年くらい前>
節子(風吹ジュン)は妻がいる仙波(白竜)と惹かれあっていたが、優しい川畑(前田吟)と結婚。
川畑と節子の間には成実(杏)が生まれる。
どうも仙波の子らしいと気づいた川畑だが、それでも自分の娘として愛する決意をする。

※夫は妻と娘にそれをしっかり伝えるべきだったよね。
 だって娘も薄々気づいちゃったみたいだもん。
 黙っていた優しさが、後で皆を苦しめる事になるんだよね。

<15年くらい前>
成実が中学生になった頃、三宅伸子(西田尚美)が、成実が仙波の娘だと知ってしまう。
金に困っていた伸子は、節子をゆするために自宅を訪ねるが、留守だったので成実に意味ありげな言葉を残して帰る。
事態の深刻さに気付いた成実は、伸子を追いかけて刺殺する。(映画冒頭のシーン)
節子と仙波は連絡を取り合い、仙波は「自分が殺した事にする。」と自首。
担当刑事の塚原(塩見三省)は、何かおかしいと思いながらもそのまま見過ごす。

※そもそもこのゆすり、川畑は薄々知っているので成立しないのに、皆それを知らないんだよね。

<現在>
成長した成実は、仙波が戻ってくる事を願って、仙波が愛した「玻璃ヶ浦」の自然を守っている。
(彼女が開発側の話を聞き入れず感情的なのは、何としても海を変えたくないから。)
仙波は出所した筈だが、行方がわからない。(既に家族もいない。)
過去の殺人は冤罪だったのではないか、と思う塚原は、定年後に仙波を探し出し、彼が死を間近にしていることを知り、彼のかわりに玻璃ヶ浦に向かう。
(映画では塚原がどれだけ真相を知っていたかは描かれない。
 単に、死期が迫った男の、故郷に行きたいという夢を叶えてやる為だけ、なのかもしれない。)
旅館に現れた塚原に気付いた川畑夫妻は、15年前の事件が暴かれるのを恐れる。
家人や客が出払っている間に、川畑は塚原を薬で眠らせ、恭平少年に「花火をやろう」と言う。
「火が飛び込むと危ないから」と、恭平少年に旅館の窓や煙突を濡れた段ボールで覆うよう指示する。
煙突がふさがれたため、ボイラーが不完全燃焼を起こし、塚原は一酸化中毒で死亡。
全ては成実を守るためだった。

※だからといって恭平を巻き込むのはどうかと思う。
 それに塚原に全く何も訪ねないで殺すって…乱暴すぎる。
 そもそも、成実に何か伝えようとするシーン、あったっけ?
 しつこく成実に話しかけようとするから両親が「何しにきた!?」とか言って、「15年前の件で…」っつって、「やっぱりかッ!」的な勘違いやり取りがキチンとあれば納得出来ただろうけど。

※成実の「海を守る」行動が仙波の為だったとしたら、それは彼女は仙波が親だと知っていたから、という証ではないですかね?
 だいたい、全くの他人が自分の罪をかぶってくれるワケない、っ思うでしょ普通。

というわけで、「真夏の方程式」は、殺さなくても良い人を二人も殺してしまった「家族間コミュニケーション不足」の人たちの話、ってなっちゃいますよね。
ミモフタモナイけど、そうですよね。

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