漫画 「岸辺の唄」 [漫画]
(Amazonの画像が無いので撮ってみました)
漫画 「きしべの うた」今市子 ホーム社漫画文庫(発売:集英社)(¥571 税別)
オススメ度 ★★★★☆
岸辺の唄
予言
氷の爪石の瞳
失われた岸辺
西からきた箱
雲を殺した男
(あとがき漫画)昔々ある所に…
短編連作集。舞台は、昔の中国のような世界。帯に「オリエンタルファンタジー」と書いてあるので、中国のおとぎばなし、と思うと良いのかな。異世界、とも思えるけど。
この作品では、読者に、二つの要素が提示される。「世界観」とでも呼べば良いのだろうか。
一つ目は、「人と鬼人の共棲」という要素。(ただし、地域によっては鬼人を全く受け入れないで暮らしている。)
鬼人は長命で、300年生きている者もいる。また、タフでもある。ヒトとは違う。
鬼人の見た目は色々で、ヒト語を話さない、まるっきりの「鬼」である者、一見ヒトだが角がある者、ヒトにしか見えない者など。
暮らしぶりも色々。人を食らい、まさに「鬼」として生きている鬼人もいれば、人間相手に商売をしている鬼人もいれば、人間と区別がつかないくらい溶け込んでいる鬼人もいる。
これらの違いは、どうやらまわりの環境によるものらしい。はっきり描かれているわけではないけれど。どうやら子供の頃から人間(じんかん)で暮らしていると、ヒトっぽくなるらしい。(まあこれは人間も同じことで、ヒトとして生まれても鬼になってしまう者も、いるわけで。
アレですね、ピグマリオン効果っていうんですか、「周りがそう扱うとそうなる」っていう。(ヒグマリオンじゃないよーん)
二つ目は、「儀式」という要素。もっと言えば「儀式に振り回される人々」、だろうか。
何度も「水乞い」の儀式が出てくるのだが、「成功すれば」、必ず水に恵まれる。しかし、「どうすれば成功できるのか」が、誰にもわからない。
成功の秘訣をある程度(ある程度というのがミソだ)知っている村もあれば、全くカンチガイしている村もある。何しろ、成功させた本人にも、何が決定打だったのか、わかっていないのだから。手順なのか、心構えなのか?それとも、もともとの素質なのか?そしてそこからさまざまなドラマ(ほとんどは悲劇)が生まれる。
私が面白いと感じたのは、「儀式の形骸化」だ。儀式には理由があるハズだし、その儀式を完遂するための手順は、何らかの由来があって成立するハズのものだと思う。しかし、長い年月がたつうちに、手順そのものだけが残って、その由来はわからなくなってしまう。それが儀式というもの。
昔の人が未来の儀式を見たら、「ああっそうじゃないのに」と思ったりするんだろうなー。
ふと「精霊の守り人」を思い出す。
私はこの連作集の中では、表題の「岸辺の唄」が一番好きかな。主人公が健気で。あと、「西から来た箱」も、えっそんな結末?と不思議な余韻を残すけれど、主人公が可愛くて(可愛らしくて、では無い)、好きだ。
オススメ。
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