SSブログ

小説 「孤宿の人」 [小説]


孤宿の人 (上) (新人物ノベルス) (新人物ノベルス)

孤宿の人 (上) (新人物ノベルス) (新人物ノベルス)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 2008/05/22
  • メディア: 新書

孤宿の人 (下) (新人物ノベルス) (新人物ノベルス) (新人物ノベルス)

孤宿の人 (下) (新人物ノベルス) (新人物ノベルス) (新人物ノベルス)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 2008/05/22
  • メディア: 新書


小説 「こしゅくの ひと」
宮部みゆき 新人物ノベルス(新書)(各¥924 税別)
オススメ度 ★★★★☆



最近の宮部みゆきさんの作品は、「話はわかったけど、でも、それって、余りにもつらい…」というものが多くありませんか。
以前は、もっと楽しい気持ちで読める作品が多かったような。
「たとえ題材は暗い事件でも、高い明度の色で描かれているから、カラッとして見える」みたいな。

でも、「理由」「摸倣犯」「あかんべえ」など、最近はどーも暗い気持ちになりがちな作品が続いている感じ。
この作品も、「子供が苦しむ」作品なので、「あかんべえ」の時と同じく、もやもやしました。
 ・「理由」のレビュー
 ・「摸倣犯」のレビュー
 ・「あかんべえ」のレビュー

江戸時代、讃岐の国、主人公は、「ほう」という名前の女の子。
早くに親を亡くして、あちこちたらいまわしにされていました。
出生が歓迎されたものではないこと、物覚えが非常に悪いことから、大人たちからうとまれているようです。恐らく、たいして可愛い外見でもないのでしょう。
「ほう」は「阿呆のほう」なんだ、などとひどい事を吹き込まれていて、本人も「そうなんだ」と受け止めているあたり、哀れですし、とても歯がゆい…。

讃岐地方(四国)にやってきたのも、まあ「厄介払い」の流れからです。
彼女はいつも、大人たちの都合に振り回されます。それが不親切からであれ、親切からであれ、自分の身の振り方を決めるのは常に自分以外の大人です。
「どうしたいか」と聞かれても、彼女には答えることができないから…。

(読みながら、「こっちだよ、あっちだよ」と手を引っ張られて、頭がぐらんぐらんしながらこっちに行きあっちに行きしている子供の図が思い浮かびました。)

そんな彼女にも、きちんと仕事の手順を教えてくれたり、愛情を注いでくれる人もいました。
でも、それは、浅はかな逆恨みから、一瞬にして壊されます。
お世話になっている家での、お嬢さんの突然の死。しかしこのことは、まるで「無かったこと」のようにされてしまい、やがて大きな陰謀へとつながっていくことになります。

一方、もう一人、「厄介払い」でここにやってきた人物がいます。
江戸で家族と家来を殺害したと言われる「加賀様」です。(しかし成敗されずに封じられるあたり、道真みたい。)
町の一角に幽閉され、誰もその姿を見ることはないのですが、彼のしたことは「おそらく鬼か悪霊がとりついているせいだろう」と思われており、彼が幽閉された屋敷ももともと不吉だとされていたので(じゃあそんなところに連れて行かなきゃ良いじゃんねえ、とも思うが)、町で何か起きるたびに「きっと加賀様のせいだ」という噂が流れます。(雷も彼のせいにされる。やっぱり道真みたいですね。)

 ※大多数の人は「迷信」を信じていますが、
  そうでない人=迷信を利用して合理的に物事を進めようとする人もいるのが面白い。
  ゆれている時代だったのかも知れません。

ほうと加賀様が、とあることから偶然出会います。
二人の身分や外見は全く違いますが、「自分で選んだわけではない場」に置かれているという点では、同じように孤独です。
二人は、まわりの心配をよそにふれあうことになります。
しかし、多分このふれあいもつかの間なんだろうなあ…と思いながら読み進むことになります。つらい。

また、この町で起きる色々な事件について、読者にはその原因などが明かされますが、奉行や町方の関係、藩の内情、医者の立場、身分の違いから起きる齟齬(くいちがい)などが描かれるとともに、そういう事件について公にするわけにはいかない事情も読者に知らされるため、「泣き寝入りかよ!」と思いつつ、「でも仕方ないのか…」と思わされる。
非常につらい。

不条理な理由で人が死ぬ場面が多く、それも「死んだ」と聞かされるだけなので、「本当は生きているんじゃあ?」と思いますが、最後までそのままなので、やっぱり死んじゃってるのね。
死にすぎ。

色々な場面で探偵役は出現しますが、どの人も、口に出して「犯人は○○だ」と言わないし、そのうち、いろんな意味で消えてしまいます。
謎解きは「ある」けど、「あるだけ」。
中には一応片がつく事もありますが、「そういうつけ方じゃなくても」と思いました。
この作品を「ミステリ」に分類するのはためらわれますねえ。

当然、最後も「大団円」というわけにはいかず。最後まで、ツライ!!

それでも私がこの作品を★4つとしたのは、加賀様とほうのふれ合いにグッときたからです。
ほうは阿呆のほうではないよ、と教えてくれるシーンが特に好きです。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。