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小説 「楽園」上・下 [小説]

楽園 上 (文春文庫)

楽園 上 (文春文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: 文庫
楽園 下 (文春文庫)

楽園 下 (文春文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: 文庫

小説 「らくえん」上・下
宮部みゆき 文春文庫(上¥667 下¥648 税別)
オススメ度 ★★★☆☆

↓もろにネタバレです。ご注意を。

「模倣犯」で取材をしていた女性記者が再登場。
あれから9年経過した、という設定。
はっきり続編というわけではないが、しかし、「模倣犯」を読んでいないと何が何だかわからないんじゃないかな。だから「続編的な作品」だろう。

彼女は、『あの』事件によって、ライターとして世間で有名になってしまったのだが、実は複雑な思いから、『あの』事については一切書けず(書かず?)、記者としての活動は、停滞した状態のまま。(地方誌の仕事はしているんだけど)
そんな彼女に、奇妙な依頼が舞い込み、あのときのことが蘇る。

依頼というのは、「亡くなった息子(中学生になる直前だった)が生前に描いた絵に、直接見ているはずの無い情景が描かれている。これはどういう事なのかを解明して欲しい。」といったもの。
その「見ているはずの無い情景」というのが、16年ほど前に起きた殺人事件。
そこで、まず、その殺人事件について調べることになる…。

ここで私が思い出したのは、東野圭吾の「探偵ガリレオ」の、「離脱る」という作品。
テレビでは第二話だった。
小学生の男の子が、幽体離脱(?)によって容疑者のアリバイを証明しようとして、「えーそんなの証明になるの?」という話になるのだが、ガリレオ先生はこれを科学的に解明するんですよね。

で、だから、じゃあこっちの小説でも、「直接見ているはずの無い情景」はサイコメトラーちっくに描かれたわけではなく、何かそれなりに原因があって描いたのだ、という流れになるんでしょう?と思って読みすすめていった。
フンイキ的にも、「誰か Somebody」「理由」みたいな、地道かつ現実的なムードで進んでいくので。

ところが、最終的にそうならなかったので、ちょっと驚いた。
「やはり超能力だった」的な処理だった。
今回の作品でも「神目線」は無く、彼女の取材や彼女の考えを通して「事実」が描かれるので、ホントのホントの理由はわからないのだが、超能力だとしか考えられないような描き方だった。

この点について、賛否両論あるようだ。

私はどうか、というと、否とは言わない。
だって宮部みゆきの作品って、こういうの多いでしょ。
「クロスファイア」が一番有名か。あと、「龍は眠る」。「霊験お初」などの時代物もそう。

だから、別に「超能力を描くこと」自体は「否」ではないと思うのだ。
この作品のあり方を否とする人々の思いは、「模倣犯の続編的に書かれている作品(リアルであるべき作品)」において、「超能力(脱リアルな現象)を認めちゃうこと」について反発を感じる、という事なのだろうと思う。
なんであえて「模倣犯」とからませるわけ?みたいな。

しかし私は、主人公が最終的にそう判断しました、というのであればそうなんでしょう、と思う。
ただ、もし私が主人公だったら、認めないだろうと思う。
上で「否とは言わない」と書いたのは、そういう意味だ。(つまり、是とも言わない。)

「模倣犯」の中に(今さら)超常現象を指摘する向きもあるようだが、それについては賛成しない。
私が思い出したのは村上春樹の初期三部作だ。
『風の歌を聴け』の後に書かれた、『1973年のピンボール』を読んで、「あれあれ?」と思い、さらに、『羊をめぐる冒険』で感じた「おーい!」感。
「1973年の…」で滑走路に出て、「羊を…」で飛び立っちゃいましたか?と思った、その感覚。
この作品も同じなのかな、と思っている。

★が3つだけなのは、後半バタバタした感じだったから。
「断章」がもっと効くだろうと思っていたのに、彼の存在がわかるのが、ちょっと、あいにく、トートツに感じたし、その母親の描き方にも不満が残った。
かといって1つとか2つって程じゃないし。という気持ちで。

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