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小説 「嘘をもうひとつだけ」 [小説]

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/02/14
  • メディア: 文庫

小説 「うそを もう ひとつだけ」
東野圭吾 講談社文庫(¥520 税込)
オススメ度 ★★★☆☆


加賀恭一郎シリーズ、第6弾。
↓超ネタバレあり、未読の方はヒキカエセ。


加賀恭一郎シリーズ、第6弾は短編集。
「嘘をもうひとつだけ」「冷たい灼熱」「第二の希望」「狂った計算」「友の助言」の五編。

*****

「嘘をもうひとつだけ」

元バレリーナ、現在はバレエ団の事務員だった女性が、マンションの7階(自室)のバルコニーから転落死する。
彼女はスウェットを着てトウシューズをはいていた。

膝をこわしてバレエを引退したことが原因の自殺か?
それとも他殺?しかしどうやって?バルコニーの手すりは高く、それを越えて転落させるのは相当困難だ。

加賀は、バレエ団の関係者から聞き込みを行い、一つの嘘に気がつく。
バレエに対する情熱から生まれた事件。
ただし情熱の向いている先は様々だ。人によっては「え、そんな事で…」と思うかも知れない。

「眠りの森」事件でバレエについて少し知識を得ている加賀に、ちょっと「クスッ」と思う一編。(「眠りの森」についてはこちら。

*****

「冷たい灼熱」

暑い夏の日、自宅の洗面所で主婦が殺された。
預金通帳と現金が無くなり、1歳の息子が行方不明になっていた。

すわ、誘拐事件!と身構える警察だが、身代金要求の電話などが一切ないまま、日は過ぎる。
加賀が話を聞いた夫の受け答えも、何だかおかしい。

加賀は、ある場所に夫を連れて行く。そこで夫は全てを語る。
この場所がどこなのか、文章では書かれない。
「あれだけ世間で問題になっていること」が起こり得る場所、派手なネオンサインがある場所、と書かれるだけだ。

何年も経過したら、世間の話題から消えて、これがどこだかわからなくなるのかな。
そうなって欲しいね。

*****

「第二の希望」

母子家庭が暮らすマンションの一室で、男性の死体が発見される。
男性は母親の交際相手で、部屋の鍵も持っている仲だった。
部屋が荒らされており、恐らく彼は強盗を阻止しようとして殺されたのではないか?と…いや、読者はすぐ気づく。そういう筋書きにしようとしたのだろう、と。

11歳の娘は、器械体操をやっていて、大事な大会を控えている。
母親としては、こんなことで娘を動揺させたくない。
器械体操の選手になることは、自分の昔からの夢でもあるからだ。
娘の天才的な才能を伸ばすために、一心にうちこみ、それが前夫との離婚のきっかけにもなった程なのだから。

加賀は、体操の会場で、目前に娘の素晴らしい演技を見ながら、母親から真相を聞き出す。
「なぜ凶器と思われる荷造りひもは、20メートルもの長さだったのか?」
がポイント。

しかし作品中で、動機は明らかにされない。
この作品では、動機はないがしろにされている。ちょっと残念だな。
方法が書きたくて書かれた作品なのかも知れない。それなら、「ガリレオ」の方で書いても良かったかもね。

*****

「狂った計算」

交通事故で夫を亡くした女性が、花屋で菊とマーガレットを買っていく、というオープニング。
気の毒な若い未亡人に、誰もがやさしい気持ちで接するのだが、彼女は「みんな、わたしをほうっておいて」と思っている。

加賀は、未亡人のもとに、行方不明になっている男性の聞き込みのために訪れる。
どうやら男性と未亡人が不倫の関係だったと思い、行き先に心当たりがないか確認に来たようだ。
しかし彼女は不倫関係を否定して、加賀を追い返す。

これであきらめないのが加賀だよね!
隣の主婦から聞いた、「葬式の直後に未亡人が冷凍食品を食べていた」という話をきっかけに、推理を働かせる。
彼女が、毎日コンビニで氷を買い、その後に花を買っていたことをつきとめる。
薬局でアイスノンをたくさん買っていたことも。

人間の行動について、計算通りになることなんて、実はほとんど無いのかも知れない。
ちょっとしたどんでん返しは、読者にとっての「計算違い」だろう。

*****

「友の助言」

高速道路で突然眠くなり、事故を起こしてしまった男。
入院中に、友人の加賀が見舞いに尋ねてくる。
実は、加賀に会おうとして高速を飛ばしている最中の事故だったのだ。
加賀は、いつまでも現れない男の携帯電話に電話をして、その電話に出た交通課の警官から事情を聞いたのだった。

「お前は、運転の最中に居眠りをするような男ではないだろう。」と加賀は言う。
「睡眠薬を飲んだだろう。」と。
男は否定する。
もう加賀に何も相談する気はなくなっている。

加賀と男の会話は、淡々と進む。
読者は意外な真相を知ることになる。
「未必の故意」であることは簡単に知れるのだが、そのきっかけは、まだ今の時代では意外だと思う。

最後の男の選択は正しかったのだろうか。
私が彼なら、どうするだろうか。
色々考えさせられる作品。誰も死なない、変わったお話。

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