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小説 「チーム・バチスタの栄光」上・下 [小説]

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2007/11/10
  • メディア: 文庫
チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫 (600))

チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫 (600))

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2007/11/10
  • メディア: 文庫
小説 「チーム・バチスタのえいこう」
海堂尊(かいどう たける) 宝島社文庫(各¥476 税別)
オススメ度 ★★★★☆

面白かった!!

『チーム・バチスタ…』は、第四回、2005年の「このミス大賞」受賞作。そういえば私は第二回の「このミス大賞」受賞作(「パーフェクトプラン」レビューへのリンク)も読んでますが。
ちなみに「このミステリーがすごい!」というのは、投票によって国内と国外のミステリのベストテンを決めるもので、「このミス大賞」というのは、新人作家向けのコンテスト。つまり「このミス」と「このミス大賞」って、意味が違うのね。知りませんでした。

この作品について、「ミステリだと思って読んだのに…」という感想を見かけます。確かに、本家(?)の「このミス」には「本格」が並んでいますから、『チーム・バチスタ…』にも、そういう「色あい」を期待する人が多いのかも知れません。
私は、後半、結構サスペンスフルな展開になると感じたし、「誰が、どうやって?」というのも大切な要素だったし、ミステリで良いんじゃないでしょうかね?(そもそも「ミステリとは」とか定義しだしたら、きりがないですもんねー。)


映画で主人公の「田口」を演じているのは竹内結子ですが、原作の主人公は中年男性です。(見栄えの問題かしらね。「ガリレオ」みたいだね。)
また、厚生労働省の役人「白鳥」は、映画では阿部寛が演じていますが、原作ではずんぐりむっくりのブ男、らしい。
映画も面白そうだなー、観ようかなどうしようかなー。

バチスタというのは、肥大してしまった心臓の一部を切除して縫い直して、つまり心臓を小さいサイズに変えて機能させよう、という、画期的な(作者に言わせればラテン系の)手術方法です。バチスタという名前は聞いたことがあったんですけど、実情は今回初めて知りました。人名で、しかも俗称なのね。

大学病院で、バチスタ手術の第一人者をアメリカから招いて以来、ずっと成功が続いていたのに、ある時から手術が連続して失敗となり、患者の死亡が相次ぎます。こういう場合、医療過誤などが無いかどうか調査しなければ、ということになるわけですが…。

ところが、ここに大学病院の「しがらみ」がからんできちゃう。

その第一人者を招いたのは院長なのですが、調査委員は、招へいに大反対(しかも普段から院長と敵対ぽい)していたヒトだから、その人に調査を依頼したら、「そら見たことか!」みたいに、大ごとになるのが目に見えている。でも実際には医療過誤ではないかも知れないし、大騒ぎになったあげくに「何もない」となれば、ただの時間の無駄だし…。
そこで、派閥争いや出世に無関心、無関係な主人公が院長から呼び出され、調査委員会には内密に「予備調査をせよ」という緊急命令が下るわけです。

前半は、その状況の説明や、きゅうくつな現実の中で主人公が関係者から聞き取った調査内容が紹介されます。
大なり小なり、「組織」というものに所属したことがある人なら、この前半、ニヤニヤしながら読めると思いますねえー。時々クスっと「黒い」笑いがこみあげてくると思うよ…。

後半になると、いよいよ、「白鳥」の登場。厚生労働省がすすめようとしている、医療過誤についての第三者委員会のプロジェクトの関係者で、これはまだ公的に成立していない委員会なのですが、縁あって、調査を始めることになります。
こいつがすげんだ。
めちゃくちゃ。
過激な古畑任三郎。
聞き取り調査の相手に面と向かって「バカ」とか言っちゃうんだよねえ、調整とか打ち合わせなんていう言葉から一番遠いところにいるお役人。
こんな公務員いないでしょ!というか、いてもらっちゃ困るんじゃないの?

他にも、良い意味でも悪い意味でも心ひかれる登場人物ばかり。
こういった、登場人物の設定や、彼らが言うセリフが、いちいち面白いんだよねえー。
あと、文章が読みやすい。いや別にスカスカなわけじゃなくて、何だろうなあ、力が抜けているとでも言おうか…。ちょっと敬語の使い方が「?」というところはあったけど。
こういった、楽しさ、読みやすさが目立つから、ミステリ色よりも、エンタテインメント色が強く感じられて、その点が「今までのミステリと違う…?」という、軽い混乱と違和感をもたらすのかも。
私は好きだ。

最後に。
この作品には、いくつかの問題提起が織り込まれているのにも、気が付かされました。
例えば、小児は日本の規制で臓器の移植ができないから、わざわざ海外に行かなければならない、とか、手術で死亡した患者のほんの一部しか解剖されないために、本当の死因はほとんどわからない、とか。
これらの問題、作者が現役のお医者さんらしいので、リアルに、不自然さがなく作品に溶け込んでいるのかな、と思います。


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くどい人

追記
「宝島文庫」の特徴なのか、たまたまなのか。
元々しおりの紐もついておらず、広告も紙のしおりもはさまっていなかったので、少しずつ読むのには向かない、と思った。
by くどい人 (2008-02-24 12:00) 

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