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小説 「海炭市叙景」 [小説]

海炭市叙景 (小学館文庫)

海炭市叙景 (小学館文庫)

  • 作者: 佐藤 泰志
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/10/06
  • メディア: 文庫

小説 「かいたんし じょけい」
佐藤泰志 小学館文庫(¥650 税込)
オススメ度 ★★★☆☆


映画「海炭市叙景」の原作本。(「海炭市叙景」の公式サイトはこちら
作者は1990年(平成2年)10月に、41歳で自殺している。
この本は、1988年から1990年4月にかけて雑誌に掲載されたものが、作者の死の翌年出版されたもの。
その後絶版になっていたのが、文庫で再出版されたのは、映画化がきっかけなのだろう。
私が買った文庫本には、映画の1シーンの写真が載った帯がついていた。(余談ですが…「リリーフランキー?」と思ったその写真は加瀬亮でした。)

この本は短編集だ。
「海炭市」は海に面した町で、炭鉱がある(あった)のだが、閉山して大量の失業者が出てしまい、現在では活気を失くしている。
実在しない架空の町だが、作者が函館出身なので、函館がモデルと言われている。
現実の函館に炭鉱は無い。経済的に斜陽になっている雰囲気からすると、夕張あたりがミックスされているのだろうか。

この本には、その町に住んでいる、あるいは滞在している人々のくらしの断片が、18編収められている。
前半9編が海炭市の冬、後半9編が海炭市の春だ。
もし作者が生きていたら、夏と秋が描かれていたらしい。つまり、この作品は未完成なのだ。

上に書いたとおり、再版されているので、解説が2つ付いている。
ハードカバー版の解説は詩人の福間健二氏。
小説の短編それぞれつけられているタイトルは、この方の詩集のタイトルをそのまま借りたものらしい。(何という詩集なのかは不明。)
文庫版の解説は評論家の川本三郎氏。
映画がらみの評論が多い川本氏が解説を書くということは、やはり映画になった作品だからだろうな。
しかし、この解説が書かれた時、まだ映画は完成していなかったらしく、映画版「海炭市…」の感想が全く無いのは残念だ。

さて、カンジンの中身については…。
暗い。
そして何となくイラつく。
何か問題を抱えた人々の話が多いのだが、それについて特に結論は出ないまま次の話に進む。
だから、「一体どうなってしまうのだろう?」と、軽いフラストレーションを抱えたまま読み進むことになる。
まあそれは「叙景」なのだから当然だと割り切ることとして。

私が感じたこの違和感は何だろう?

文章自体は文語体ではなく現代的だし、書かれている内容もかなり近い過去の話(1980年代あたりかな)だから、もちろん「現代物」なのだが、どういうわけか昔の人が書いた文章に感じる。
なんつーか芥川龍之介とか。
その頃の人の文章のように感じながら読んでいると、「…あれ?あ、現代だったんだっけ。」と戻ってくるカンジ。
しかも最後の方の短編に「これは何だか村上春樹みたいだな」と感じる作品もあった。
一気に現代感です。

こんなカンジ(違和感)を抱いたのは私だけかも知れないけど。
万人に薦められる小説ではないと思うので、オススメ度はやや低めにした。

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