SSブログ

小説 流れ行く者(守り人短編集) [小説]

流れ行く者: 守り人短編集 (新潮文庫)

流れ行く者: 守り人短編集 (新潮文庫)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/07/27
  • メディア: 文庫

小説 「ながれゆく もの  もりびと たんぺんしゅう」
上橋菜穂子 新潮文庫(¥578 税込) オススメ度 ★★★☆☆

「守り人」シリーズの短編集。
子供時代のバルサとタンダの話。

以下、ネタバレです。


「精霊の守り人」(せいれいの もりびと)から始まった「守り人」シリーズ。
これまでに長編が七作出ています。

一作目の「精霊の…」の時、幼い皇太子「チャグム」を守るため、
命がけの旅に身を投じた、短槍使いの女用心棒「バルサ」は30歳でした。
彼女の幼なじみ、呪術使いの「タンダ」は28歳。

そして、最終巻は、開始から6年後の話です。
ファンタジーなのに、いきなり高年齢の主人公たち。
(それが面白いんですけどね。)

この短編で描かれるのは、少女時代(13歳)の彼女、少年時代(11歳)の彼です。
当然のことながら、まだまだ「精霊の…」のバルサやタンダではありません。
まだまだ、未熟者なのです。

一体どんな経験を経れば、あのバルサ、あのタンダになるのか。
その一端が描かれます。

 *****

『浮き籾』(うきもみ)
バルサ13歳、タンダ11歳。
村はずれに、人を襲う山犬が出るという。
村のみんなは、以前行き倒れたオンザ(タンダの親戚)の祟りだと噂をするが、タンダにはそう思えない。
バルサとタンダは、真相を確かめようとする。
「浮き籾」とは、刈り取った稲籾を水に浸けると浮いてくる、芽を出さない米のこと。
人の中にもまた、浮き籾のような者が存在するのだろうか。

『ラフラ<賭事師>』
酒場の用心棒をつとめる養父の「ジグロ」、酒場の手伝いをして働くバルサ。
バルサは、腕利きのラフラ(賭事師)の老女、「アズノ」に気に入られ、可愛がられる。
ある日アズノは、領主「ターカヌ」の館に招かれ、バルサを伴って領主のもとに赴く。
彼女は、50年も前から、領主とススット(サイコロを使った賭け事)を続けているのだ。
一進一退の素晴らしい攻防が続き、今回もなかなか勝負がつかない。
年老いた領主は、自分の孫息子「サローム」が、自分に代わってアズノと決着をつける事を望む。
アズノの表情は暗い。それは、バルサが知らなかった「ラフラの仕組み」のせいだった。

『流れ行く者』
突然倒れて高熱を出した養父のジグロ。
しかもジグロは「こんな暮らし、やめるか。」とバルサに言う。
不安な思いの中、ジグロは隊商の護衛の仕事を受ける。
因縁をつけてきた護衛仲間に槍をふるう事をためらったバルサに、ジグロの怒声がとぶ。「なにをしている!」
(筆者注:大人のバルサは、しかけてきた者には容赦ないのですが、13歳のバルサはまだそういう事が出来ないのです。)
旅の途中、隊商は襲撃を受ける。
バルサはついに「やらなければやられる」という窮地に陥る。

『寒のふるまい』(かんの ふるまい)
(5ページほどの短編です)
冬のはじめ、タンダは今日も残飯を集めて山に向かう。
「寒のふるまい」は、冬の間、食べ残しを山の獣に分けてやると里の人に害をなさない、という古い習慣だ。
そうして山に入っては、タンダは村の外から村へと続く道を見守る。
数日後、大小二つの影が、その道をたどって近づいてくる…。

*****

いずれも、日常の一角を切り取ったようなお話。
作者自身が文庫版あとがきで書いているように、子供向けのファンタジーとしては難解かも知れません。

だから、お勧めの星は3つにしました。

子供たちは「わからなかった」という感想を抱くだろう、と作者は言っています。
しかし、バルサやタンダが大人になったように、子供たちがいずれ大人になって、
「ああそうだったのか」と思う日が来ることを、作者は願っているようです。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。